【はるかなる空】人生の証2 

【はるかなる空】人生の証2 

こんにちは、ワカマツです。

大分県別府市といえば日本最大の温泉地、「湯の街別府」に称されるように、源泉の数や湯量も世界屈指の観光地ですよね。

私が初めて別府を訪れたのは小学校の修学旅行の時でした。それから不思議なことにこの街との関りが続き、いつしか第二の故郷になってしまいました。

別に、観光地としてや温泉があるからという意味ではなく、また、自分自身が特別にこの街を意識していたわけでもありません。

実際にこの別府にいた期間は大学生活で過ごした、たったの4年間だけでした。しかし、ここで出会った人たちとの生活は、私のその後の人生を変えるかのような出来事ばかりが起こり、気がつくと、人生の大半をここで過ごしたかのような錯覚さえ起こしてしまいます。

生きている限り、人は楽しみや苦しみを背負いながら人生の旅を続けています。私も生きてきた中で、この4年間の生活が人生の苦楽を凝縮しているといっても過言ではないほど、波乱万丈な時をすごした時期でした。

また、ライターとして生きてきた出発点もこの街にあります。

はるかなる空

 

第一章『旅立ち』1

 

昭和46年の春、健一は小学校の修学旅行のバスの中にいた。

熊本城を見学し、阿蘇草千里で昼食をとり、今夜の宿泊先である別府へとバスは走り出した。

阿蘇五岳を背に、壁のように立ちはだかる外輪山の城山峠を登り、バスはやがて緑豊かな瀬ノ本高原へと吸い込まれていく。

高原の中を走るバスの中から、まるで異次元の世界を見ているかのように、初めてみる雄大な景色に健一は心を奪われていく。

やがて、バスは牧ノ戸峠を過ぎ、右手に久住連山を望みながら長者原へとはいり、高原を切り裂くように、一直線に延びるやまなみハイウェイを緩やかに進んで行く。

健一は目に映るすべての景色を記憶するために、バスのガラス窓に顔を貼り付けて、まるで一枚一枚写真を撮るかのように心の中に刻み込んでいった。

夕方バスは別府鉄輪温泉の一角に位置する「みなと屋旅館」に到着した。

男女別々の少し大きな部屋に入り、大広間で全員一緒に夕食を食べた。もちろん外出などはできず、部屋で消灯時間が来るまで、大晦日のカウントダウンを楽しむようにはしゃぎまわり、やがて消灯時間と同時に部屋の電気が、引率の先生によって消された。

何分かの沈黙が過ぎて、誰が投げたのかはわからないひとつの枕が、微かな月の輝きに照らし出された薄暗い部屋の中央付近で宙を舞う。

戦闘開始、どこからともなく枕を寝ころびながら避けて、握りしめた自分の枕を誰かに当たれと思わんばかりに、力を込めて投げる。

やがて部屋を二分するかのように激しく枕は飛び交い、修学旅行の最大イベントは最高潮に達した。

そして時間を見極めたかのように引率の先生がドアを開け、大声で注意され、戦闘終了、修学旅行の夜は楽しい思い出とともに更けていった。

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事が起きたのは次の朝、朝食前に旅館屋上でラジオ体操を行うことになり、健一は眠たい目をこすりながら屋上へと足を運んだ。

時間は午前6時過ぎ、5月下旬の朝はまだ肌寒く、少し体を震わせながら手すり越しに別府の風景を見始めた。

その時であった、別府湾から昇る朝日が湾を通り抜け、街並みを走り、扇山を越え、鶴見岳へと一気に駆け抜けた。

別府湾の方に目を向けると、まるで水墨画を見るように、国東半島から続く弓なりに描かれた海岸線が大分市内まで続き、水平線の向こうに、たぶん、四国であろう、薄い陸の影が浮かび上がっていた。

健一はまた、自分の目を少しずつ街並みへと移した。すると街のいたるところから立ち昇る湯けむりが見える。

それが朝日と混ざり合って、緑の丘陵の扇山へとゆっくりと流れていき、まるで自分の身体が湯けむりと同化して、大空を飛んでいるかのような錯覚さえ覚えてしまった。

健一はラジオ体操が始まっていることも気づかず、手すりを乗り越えんばかりの勢いで湯けむりを追いかけて、ついには先生に注意されてラジオ体操の列に戻った。

子供心に誓った。自分が死ぬまでに必ずもう一度この景色を見に来ると、小学生だった健一にしてみれば、遠い地の出来事であり、心の奥深く入り込んだ情景に強い衝撃を受けてしまった。

それからというもの、健一はこの景色が忘れられないのか、考えもしないのに幾度となく、突然頭の中で写真を撮ったようによみがえり、別府への想いを強くしていく。

そしてこの出来事が、6年後に出会う一人の女性とのはじまりを、暗示していたのかもしれない。

※続きは不定期で載せていきます。

今日は最後までお読みいただきありがとうございました。(SORA2018ワカマツ)

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